【ヒゲカジトーク】ケチャップ 河合 氏 対談

未来を担う選手たちの今。

2018年1月12日

2017年も押し迫った12月30日、ふとしたきっかけで梶野智とケチャップ河合氏のサッカートークが始まりました。話題の中心は若い選手の育成。かつて「育成型クラブ」で強化にあたり、現在はエージェントとして若い選手たちと向き合うヒゲカジの話に、サッカーに詳しいタレントのケチャップ河合氏がどう切り込んでいくか。サッカーを愛してやまない二人のトークをお楽しみください。

ケチャップ 河合 氏 タレント / 梶野 智 関西レジェンドクラブ 代表

 

若手育成はチーム編成の問題。クラブ方針の問題。

梶野 智(以下 梶野) : 天皇杯準決勝を見ていて思ったんですが、ヴィッセル神戸には生え抜きでA代表の選手がいませんね。年代別代表に選ばれてきていた岩波拓也は移籍するし、小川慶治朗も将来を期待されている選手だけど、リーグでもっと試合に出ないと代表入りは難しい。 ※12月23日ヴィッセル神戸vsセレッソ大阪

ケチャップ 河合 氏(以下 ケチャップ河合) : スタメンに定着できてないですからね。

梶野 : 藤谷壮も使われてなかった。天皇杯は一発勝負だから戦略的な部分もあるだろうけど、シーズン通してもっと試合に出さないと若い選手を育てるのは難しいと思います。

ケチャップ河合 : 外国人とか実績のあるベテランとかをどんどん補強するから枠が空かない。トップで人が足りない状況でないと、若い選手は試合に出られないですからね。

梶野 : ヴィッセル神戸に限った話ではないけどね。トップに人が余るくらい有力選手を補強するうえに、将来有望な高卒も獲得してアカデミーからも昇格させる。予算規模の大きいクラブにはありがちだけど。

ケチャップ河合 : そうすると、他のチームなら即戦力の若手がスタメンどころかサブ争い。でもそれは「ふるい」と考えてはだめなんですか。切磋琢磨させて一人でも残ったらええやんって。

梶野 : 競わせるのはいいけど、せっかくの才能を開花させる機会がないまま時間だけが過ぎていくことになりますよね。こうなると「試合に出られないのは選手自身の問題」とは言い切れないんじゃないでしょうか。編成の問題。本気で若手を育成するなら若手を使わざるを得ない編成にしないと。

ケチャップ河合 : たとえば、FWだったら外国人とかベテランの強い選手がどこのチームも1人はいますからね。2トップにするならあと一つしか枠がなくて。でもそこにはそこそこ中堅の選手がいる。となると若手はそのサブのポジションを争うわけですよね。そこに高卒とアカデミー卒が二人もいるともったいない。

梶野 : ポジションは11しかないわけだから、どこかで割り切りは必要でしょう。クラブのためタイトル取るためっていうけど、選手のこと一切考えてないように感じます。

ケチャップ河合 : 強化部のジレンマでしょう、そこは。いい選手はぜんぶ欲しい。

梶野 : チーム強化を考える時、今いるトップの選手とアカデミーの選手を見たら、5年先くらいまでのメンバー構成は見えるはずなんです。それをふまえてどんなタイプの選手をどのタイミングで補強するかというプランもできるでしょう。その上でいい選手はぜんぶ獲得するのもありだけど、だったら育成は必要ないですよね。

ケチャップ河合 : アカデミーはスクール事業やと。トップは外から取ってきた選手でやるんやと。それならそれでいいってことですね。

梶野 : その時は、育成した選手は他のクラブに売り込むとか、レンタルでJ2に出して成長したら戻すという方針もありですよね。逆に、育成した選手も高卒もっていうなら、外国人は補強しないとか。

ケチャップ河合 : ポドルスキも言ってましたね。ビッグネームを取ってくるばかりじゃなくて日本人選手がもっと上手くなければいけない…ってことをビッグネームで取ってこられた人が言うのも面白いと思ったけど。 ※地元ドイツのメディア「ケルナー・シュタット・アンツァイガー」紙でのインタビュー

梶野 : 若手の育成は、育成の問題だけじゃなくてクラブの方針とか哲学に関わる問題だと思います。クラブ内では明確な方針があるはずだけれど、外から見ていてそれが全然伝わってこないと思うのは私だけですかね。

ケチャップ河合 : 梶野さんがセレッソ大阪で「育成型クラブ」にした時はどうしてたんですか?

梶野 : セレッソ大阪が育成を掲げたのは2007年シーズンからで、高卒選手はほとんど取らず、その年代はアカデミーから昇格させていました。そのかわりユース年代のスカウトには力を入れたんです。セレッソ大阪はそういう方針だとリリースしていたので「高卒選手は取ってくれないんでしょう」って言われる反面、ユース年代の有力選手がアカデミーに集まってきた。それが、継続して若いいい選手を輩出する礎になったと思います。トップチームも日本人中心の編成で、若い選手もどんどん試合に出ていました。 ※香川真司選手は2006年に高校2年生で入団。この年代で自身が所属していないクラブとプロ契約を結ぶケースは同選手が初めてだった。

ケチャップ河合 : クラブ全体で育成したわけですね。育成型といえば、ガンバ大阪はアカデミーから昇格した選手が結構活躍してます。

梶野 : 堂安律とか初瀬亮とか、ユースの時からトップでどんどん使っていましたね。

ケチャップ河合 : あれ、(長谷川)健太さんの方針やったらしいですね。試合出られへんでもトップチームに帯同させるって。ユースでもいい選手はどんどん2種登録すべきですか?

梶野 : すべき。上のレベルでどんどんやるべきです。そうしたらメンタルが変わるから。技術はすぐには変わらないけど、頭の中が変わればプレーも変わりますからね。

 

サッカーへの考え方が、日本的すぎる。

梶野 : 先日、関東のとあるクラブのGMから連絡があったんです。私がサポートしているある若手選手について、GM自身は評価しているんだけど監督が「まだ若いからトップでは使えません」…って話でした。「若い」という理由でクラブが選手を獲得しないケースは、実はそんなに珍しくはないんです。特に日本の指導者にその傾向は多いですね。

ケチャップ河合 : ああ…わかります。年功序列っていうか。

梶野 : 社会の中ではそれは大切なことだけど、サッカーは違う。海外には若くしてトップでプレーしてる選手はたくさんいます。ガンバ大阪に飛び級で入ってくる三菱養和SCユースの中村敬斗君も「20歳で海外は遅い」ってインタビューで言ってたでしょう。彼はいろんなクラブからオファーがあったようだけど、海外志向が強いみたいだからクルピ監督のガンバ大阪はいい選択だったと思います。若いとか新加入とか関係なく力があればどんどんトップで試合に出す監督だから。

ケチャップ河合 : 指導者は外国人がいいですか。

梶野 : 日本の基準では考えられない理不尽や非常識もあるけど、それも含めて世界基準を学べますからね。もちろん、日本人にもいい指導者はたくさんいますよ。ただ、みんな何か「日本的」。海外の試合もたくさん見に行っていろいろ学んでいるはずなのに、日本に帰ってきたらみんな同じような考えになる。練習でも常に100%でやれ、試合ではハードワークしろ、全員で守備しろ。

ケチャップ河合 : で、走る選手ばかりが重宝される。

梶野 : そういうサッカーももちろんいいし、選手も走れるにこしたことはない。だけど、みんながみんな同じでなくてもいいと思う。それに、規律とか礼儀とかで選手を評価しすぎるのも気になります。

ケチャップ河合 : 勤勉さばかりを評価すると。

梶野 : もちろんそれも大切だけど、サッカー選手でいちばん大事なことはゴールを奪うこととゴールを守ること。守備をしなくてやんちゃだからって干されてた選手が、外国人監督のもとで成長して海外で活躍してる例はいくらでもある。

ケチャップ河合 : スペシャルな選手は、そこだけ輝いていたら試合で十分活躍できますからね。

梶野 : でも実際は勤勉な選手ばかりが評価されて、やっているのは守って守ってってサッカー。攻撃が持ち味の選手が指導者から守備守備って言われたら、たぶん試合でいいところが出せない。

ケチャップ河合 : 欠点を消す指導っていうやつですよね、どっちかっていうと。よく言われているのが、日本の指導者講習でライセンスを取った人はみんな考えが同じになってくると。海外でライセンスを取った人はまた違う考え方みたいですが。

梶野 : そうならざるを得ない部分もあるとは思います。監督は勝敗で評価されるから負けないサッカーをしたくなる。

ケチャップ河合 : 現実路線って言われるサッカーと自分がやりたいサッカーっていうのの間でみんな苦しんでる感じありますけど。

梶野 : でも、負けないことが大事になってくると、どんどんサッカーがつまらなくなりますよね。指導者ももっと海外で指導したり外国人の下でやったほうがいい。その意味で、ヨーロッパでコーチ経験を積んでいる藤田俊哉氏の活躍はすごく楽しみです。

ケチャップ河合 : 国内では森保監督とか。

梶野 : 外国籍のスーパースターの使い方にしても、日本の基準でやろうとするからうまくいかないのではないでしょうか。自分が海外のビッグクラブの監督をしている感覚でやるのもひとつの方法だと思います。

ケチャップ河合 : スーパースターを日本のチームに合わせるんじゃなくて、スーパースターのいるチームの監督として采配するってことですね。

 

U-23で、若い選手は成長できるか。

ケチャップ河合 : 選手育成ではトップチームでベンチにいるより実践経験を積んだほうがいいってよく言われてて。その延長線上で出てきたのがU-23ですが。

梶野 : U-23は、育成の場としてはどうでしょうか。リーグでの昇格も降格もないし観客も多くはないからJ1やJ2のような緊張感がつくりにくい。そんな状況で選手がどこまで成長できるのかと私は思います。アカデミーや高校出身の有望な選手を獲得しながら「若い」という理由でU-23に入れても、どこまで成長させられるか。

ケチャップ河合 : トップでコンディション悪い選手がU-23で調整してもどってくるのはあっても、U-23からたたきあげてあがってきた選手っていない感じですもんね。

梶野 : トップチームの試合に出るから伸びるんですよ。J1の試合に出れずU-23でくすぶってるようならJ2に移籍するほうが成長できると思います。それに、プロのレベルにない選手をU-23のために昇格させているのも気になります。

ケチャップ河合 : ユースはユースで結果出さないといけないっていう焦りがあるんですかね。FC東京はスクールの規模も大きいから、ユースからどれだけトップに上げたかって。あと、ユースを見ているライターさんの話では、「親御さん」のこともあるみたいです。ずっとJ1のユースできて、そこからJ2J3のクラブに行くのはいやがると。U-23でもそのままJ1に入れるならって親がそっちを選択させるらしいんです。まあ、親も子どもがトップに上がれるもんやと思って手間もお金もかけてますからね。練習場まで送り迎えしたり。だから、親御さんは喜んだらしいですよ。ユースからトップに上がれるのは1人か2人だけど、U-23ができたから上がれるって。

梶野 : 金額的な話をすると、小学校から高校までサッカーを続けて、いろんなケースがあるけれどだいたい800万円くらいかかるんです。それでプロの夢がかなうのはいいけれど、U-23では喜んでいいかどうか。プロ野球みたいに高額の契約金がもらえるならいいですが。

ケチャップ河合 : 契約金ないですもんね。だったら大学に行ったほうがいいって話。

梶野 : そう思いますね。学生リーグはサッカーのレベルも高いし、優勝や昇格降格を争うチームの一体感の中で切磋琢磨できる。サッカー以外の面でも学ぶことが多いから、その先の人生の選択肢も広がります。トップ昇格できなくても、ユースから大学を経てまたJリーグで活躍している選手もいますから。

ケチャップ河合 : 京都サンガのやり方はどうですか。スカラーアスリートプロジェクトって、立命館学園と提携してて。ユースでプレーしながら立命館宇治に通って、学費寮費全額免除。トップに上がれなくても立命館大学に進学できる。立命館宇治に入る学力がないとだめなんですけどね。サッカーと勉強、両方できないと。

梶野 : それすごくいいですね。たとえトップに上がれなくても、立命館大学でサッカーを続けることもできるから。 ※立命館大学サッカー部:関西学生リーグ1部、Jクラブのアカデミーや高校サッカーの強豪校出身選手も多く、Jリーガーも輩出。

 

2018シーズン、関西Jクラブの楽しみは?

ケチャップ河合 : 2018シーズンの話。J1では、セレッソ大阪はACLにも力を入れるだろうし、ガンバ大阪は監督変えて巻き返しを図ってくる。ヴィッセル神戸は三浦淳寛さんがスポーツダイレクターに決まりました。

梶野 : 3つのクラブの中では、セレッソ大阪がいちばん期待できると思います。

ケチャップ河合 : ガンバ大阪はどうなんですか。レヴィー(クルピ監督)に関して、クラブはどれくらい期待してるんですか。

梶野 : ガンバ大阪は今までずっとタイトルを取ってきたクラブだけど、ここ2年間無冠ですよね。

ケチャップ河合 : ということは、一つタイトルを取ることを期待されてるということですね。

梶野 : 間違いないでしょう。レヴィーは日本では優勝の実績はないけれど、ブラジルではいくつもタイトルを取ってる監督ですから。

ケチャップ河合 : ヴィッセル神戸は吉田監督でいくんでしょうか。 ※吉田孝行監督、ゲルト・エンゲルスコーチ就任のリリースは対談後にありました。

梶野 : もう一年くらい外国人指導者と一緒にやったらいいと思うけど。せっかくネルシーニョ監督の下で学んだことがあるんだから。

ケチャップ河合 : そうですね。ああいう状況から監督としてスタートさせられて、フォローがないままっていうのもね。

梶野 : 京都サンガはどうなんですか、「サンガサポーター」のケチャップさん!

ケチャップ河合 : 去年よりはいいと思いますけど。主力メンバーがそう大きくは変わっていないので、やれるんじゃないでしょうか。ただ、ボスコ・ジュロヴスキーがコーチで来るので布部監督との二頭体制がどうなるか。 ※元名古屋グランパス監督。その後、前嶋聡志氏のアシスタントコーチ就任もリリースされました。

梶野 : どうなるか楽しみですね。

ケチャップ河合 : まあ、そういう意味では楽しみですけどね。サポーターの立場だと、昇格降格にからむのはドキドキハラハラできるんですけど、J2で中位となると楽しみ方がわからないって感じですからね。

梶野 : 私もJ2の試合は今年以上に見に行く予定なので、来シーズンの京都サンガの試合も何度も見に行きますよ。

 

ケチャップ 河合 氏

タレント、俳優。京都府出身。Jリーグから地域リーグまでサッカーにも造形が深い。松江シティFC(地域リーグ)のスタジアムDJ、サッカーのトークイベントや動画配信など、サッカーに関するさまざまな活動を行っている。2017年秋に主催したイベントには京都サンガF.C.の山中社長が出演し話題を呼んだ。関西レジェンドクラブでもイベントやパブリックビューイングの司会を行っている。

 

今回の対談後、2018年1月10日にヴィッセル神戸・吉田孝行監督の続投とゲルト・エンゲルスコーチ就任が発表されました。「コーチとして最高の選択だったと思います。横浜フリューゲルス時代にエンゲルス監督と吉田孝行は師弟関係にあり、お互いの信頼関係もあります。監督・コーチの上下関係というよりも、パートナーとしてチームの勝利を目指していくと思います」梶野 智・談 ※写真は2015年7月18日に西京極で開催された「関西レジェンドマッチ2015」より。