【ヒゲカジトーク】関西の2017シーズン

関西Jクラブの2017シーズン

 2017年12月20日

梶野 智 関西レジェンドクラブ代表

J13位・セレッソ大阪。強さの背景にあるもの。

 

J2からプレーオフを経て3番目に昇格したセレッソ大阪。シーズン当初は新監督を迎えてどこまで戦えるかが注目でしたが、その健闘ぶりは素晴らしかったですね。もともとJ1でプレーしていた選手がそろっていたというのはありますが、ルヴァンカップで初タイトルを獲得し、リーグも3位と好成績。天皇杯はまだ残っていますが、優勝候補の一角だったヴィッセル神戸やガンバ大阪の成績がふるわない中、関西勢としてシーズンを盛り上げてくれたと思います。

セレッソ大阪の好成績の理由、ひとつはユンジョンファン監督の力でしょう。リーグ戦とカップ戦でメンバーを分けるという方針を貫いたのもチーム力を向上させました。カップ戦のメンバーは、グループリーグから準決勝まで無敗です。その強いメンバーを、決勝ではリーグ戦のメンバーに代えた。ここで出場する選手は負けられないよね。チーム内の競争もすごかったと思うけれど、全選手が団結しているのも感じました。

AチームとBチームの差があまりないというのは、強いチームの特長です。トップチームがいい成績を残すためにはサブのメンバーの調子が良くないとだめだというのを、私は2010シーズンに統括部長だったセレッソ大阪で感じていました。当時のセレッソ大阪はサテライトリーグのチームの成績がダントツで、チーム内にすごい競争があった。しかし、だからこそ、すごい団結もあったんです。

もちろん、試合に出られない選手はクラブや監督に不満を持つでしょう。全選手が一致団結するというのはなかなかない。でも、今シーズンのセレッソ大阪は全選手の一体感がありました。スタンドで観戦するサブの選手を見ていたらよくわかります。みんな、ピッチの選手と同じようにプレーに一喜一憂していた。惜しいシュートは全力で悔しがり、ゴールが決まればものすごく喜んでいました。そんなふうに、さまざまな選手たちを「勝利」という同じ方向に向かせて団結させる。監督だけではなく、強化部もそれを仕向ける力になっていたと思います。ルヴァンカップ決勝での森島寛晃強化部長の胴上げは印象的でした。

 

 

J19位・ヴィッセル神戸。日本の常識を覆すクラブへ。

 

12月2日(土)、今シーズンのJリーグ最終節を私は神戸ユニバーで迎えました。目当てはルーカス・ポドルスキでしたが、率直に言って面白い試合ではなかった。ヴィッセル神戸は渡辺千真のゴールで先制したものの、残留が懸かる清水エスパルスを圧倒することができず1-3の逆転負け。ポドルスキはケガで途中交代し、試合後のセレモニーにも不在でした。無理をさせる必要はないけれど、リーグ最後の挨拶もできないほど深刻なケガだったか? スタジアムにはポドルスキを見に来た人も多かったはず。場内をまわって挨拶する選手を見るのも楽しみのひとつなのに、ポドルスキを見るためにお金を払ったファン・サポーターのことをクラブはどう考えているのかと思いました。

ポドルスキ獲得の背景には、チーム全体のレベルアップ、クラブのネームバリュー向上、ファン・サポーター拡大など、さまざまな目的があったと思う。しかし、今シーズンはその目的をどれだけ達成できたか疑問です。夏に加入してからの短い期間では結果は出ないかもしれないけれど、少なくとも最終節で観客をがっかりさせるような対応をしているようではファン・サポーターは離れます。

ヴィッセル神戸は、FCバルセロナの胸スポンサーである楽天が運営するクラブ。ものすごいポテンシャルがありますよ。多額の資金を投入し日本代表クラスの選手や海外のビッグネームを獲得するのは、いかにもヴィッセル神戸らしい。ポドルスキ獲得など、他のクラブにはちょっとできないでしょう。しかし、それにしては今シーズンの結果はひどすぎる。チームでもクラブでも、もっとポドルスキを活かすべきです。もちろんクラブには長期的な戦略があると思います。ヴィッセル神戸にしかできないJクラブの在り方をどんどん追求してほしい。世界的なスーパースターが最高のパフォーマンスを披露し、観客を飽きさせないイベントでスタジアム全体を盛り上げる。日本の常識にとらわれない世界基準のクラブづくり、それこそ、ヴィッセル神戸にしかできないことです。

 

 

J110位・ガンバ大阪。長期政権のリスク。

 

リーグ戦の序盤は好調だったガンバ大阪ですが、好調は長くは続かずシーズン途中で長谷川健太監督の契約満了が発表されました。チームは生き物だから、そういった動きも試合に大きく影響します。監督交代や退任というピンチをモチベーションに変えるチームは少なくありませんが、ガンバ大阪は監督との契約満了を発表した9月7日以降1勝もできなかった。

ケガ人が多かったこともありますが、勝てなくなった最大の原因は「5年間」という監督在任期間にあると思う。クラブ哲学に則って長期政権を敷き結果を出せるチームは、そう多くはありません。長谷川監督はJ2に降格したチームを昇格させ翌2014年には三冠を達成した名将ですが、同じ監督・同じ選手で5年は限界でしょう。何かを変えないとマンネリ化してうまくいかなくなる。

そんな現場の空気を察知していち早く対処するべきなのは、常に現場に立ち会っている強化部です。新戦力の補強や監督交代を決めるだけではなく、監督交代が公になった場合もチームをまとめて勝つことに集中させなければいけない。チームのピンチをチャンスに変えられるか否かは、強化部の真価が問われるところなのです。残念ながら、今シーズンのガンバ大阪はピンチをチャンスに変えることができないままリーグ10位で終わりました。

ガンバ大阪に守備意識を植え付けた長谷川健太監督に代わり、来シーズンはレヴィー・クルピ監督がチームの指揮を執ります。攻撃的サッカーで、年齢に関係なく力があれば若い選手でも積極的に登用する監督です。ただ、Jリーグではまだタイトルを取ったことがありません。常にタイトルが期待されるチームでクルピ監督がどんな力を発揮するのか、個人的にもすごく楽しみにしています。

 

 

 

J212位・京都サンガF.C.。強化部を刷新したクラブの行方。

 

京都サンガは関西でいちばん最初にタイトルを取ったチームです。しかし何度も降格を経験し、ここ数年は毎年のように監督が交代してチームの方針も定まりません。京セラの関連会社であり、名誉会長の稲盛和夫氏は素晴らしい哲学をお持ちですが、それがクラブから感じられないのはなぜだろう。ヴィッセル神戸とはまた違う、京都サンガらしさというものがあってもいいと思うのですが。

今シーズンは闘莉王選手の加入が話題になりましたが、チームは低迷が続き、シーズン途中にファン・サポーターに向けて「現状説明会」も行われたと聞いています。でも終盤は若い選手が活躍し順位も上がったようで、布部陽功監督の続投も発表されました。一方でこれまで強化を担ってきたチームOBは退任。クラブは新しい強化部のもとで次のシーズンを迎えるわけです。

かつてクラブ強化に携わった経験から言わせてもらうと、強化部の仕事は3年先・5年先を見据えて取り組んでいくものです。来シーズンのことをやるのは単なる「業務」であって、今はその次のシーズンに向けて準備する時期。たとえば、契約が1年しか残っていない選手をどうするかは、来年ではなく今判断すべき仕事です。1年後に放出してもかまわないならそのままでいいけれど、この先もチームに必要なら契約を延長しておかないと、来年移籍したいと言われた時に引き留めることもお金にすることもできない。今の準備が、将来のチーム強化やクラブ経営を左右するんです。しかし実際は、目先の業務に追われてそこまで考えられないクラブも少なくありません。

京都サンガはどうでしょうか。新しい強化部がこれからどんな方針を掲げてどんなチームをつくっていくのか。来シーズンはJ1昇格というだけではなく、若手の育成にも力を入れるという話も聞きますし、これからのチームづくりに注目しています。

 

 

日本のサッカーをレベルアップするために。

 

今シーズン、FC東京の久保建英のJ1デビューが話題になりました。史上3番目の若さ、早すぎるデビューを危惧する声もあったようですが、彼ほどの選手なら遅すぎるくらいです。FCバルセロナのカンテラにいた選手ですよ。とっくにJ1でプレーしていなきゃいけないレベルだ。身体ができていないとかケガへの配慮というけれど、日本の基準で選手を縛っているように思えてなりません。サッカーは年功序列じゃない。世界では、彼の年齢で活躍している選手は珍しくありません。JリーグもFIFAの傘下にあるのだから、現場はもっとグローバルになるべきだ。

日本のサッカーの裾野は確実に広がっています。小学生の「なりたい職業」の1位がサッカー選手という調査もありました。しかし、FIFAランキングでは55位(※2017年11月23日現在)。技術的なレベルは高く海外に挑戦する選手も多いし、スーパースターを招聘するクラブもありますが、まだまだいろんな面で世界に後れを取っている。どうすればレベルアップできるか。

日本にスーパーリーグをつくればいいと思う。日本を10エリアくらいに分けてチームをつくるんです。外国人枠は撤廃、スポンサーは業種国籍不問。中国の大富豪が世界中のスーパースターを集めたチームをつくってもいい。ヨーロッパや南米に行かなくても、世界最高峰のサッカーが日本で見られるんですよ。日本人選手はなかなかチームに入れないかもしれないけれど、リーグの存在は刺激になるし、入れたら間違いなく日本代表だ。日本は治安もいいし食事もおいしい、おもてなしを大切にする国民性もあるから、外国人選手もどんどん来てくれるでしょう。無理だと思いますか? 私は、それくらいしなければだめだと思う。このままでは世界で勝てないし、プロ野球人気にも及ばない。

日々サッカーに携わる者として常に「このままでいいのか」という危機感があります。戦力的にも経営的にもグローバル化が進む中、日本のスタンダードでしか判断できず長期的なヴィジョンをもたない運営を続けていては、クラブは生きのびることはできないでしょう。目先の結果だけではなく、強い選手を育てファン・サポーターに愛されるクラブづくりを、もっと真剣に考えるべきではないだろうか。